東京高等裁判所 昭和28年(う)2628号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔爭点〕原判決の認定した事実は、被告人が正規の許可を受けず貸金業を営む資格がないのに、いわゆる株式相互金融と称し加入者を募集し日掛金名義で一口百円満期を五〇日、一〇〇日、四カ月の三種として満期四カ月に加入した者に一カ月の掛金に対しその三倍の金円を貸付ける方法で約三カ月間に合計二十数名を加入させ約二十七万四千円の掛金を集めその間加入者一名に二回に亘り合計九千円を各利息月六分で貸し付け貸金業を営んだという貸金業取締法違反の事実と、右加入者を募集するに当つてその経営内容等につき虚構の事実を申向けて右期間中二十数名から日掛金名下に二十余万円を騙取した詐欺の事実であつてこれら両者を併合罪として擬律した。論旨はこの擬律を攻撃して両者は想像的競合犯であると主張している。
〔判旨〕原判決において引用せる起訴状および追起訴状記載の各公訴事実と原判決適用の各法条とを比照すれば、原判決は本件貸金業行為についてはこれを単一罪と認め詐欺行為については各金員受領の都度一罪成立するものと解し、而して右単一貸金業行為と多数の詐欺行為とは総て刑法第四五条前段の併合罪の関係ありと認定したことが明らかである。而して凡そ貸金業は金員貸与を中核とする行為であり、詐欺は金員受領を基本とする行為であつて互いにその性格を異にするのみならず、実際上原判示の両種行為はその日時、場所、態様、行為の相手その他諸要点において重複合致を欠いているから、これらの諸行為を以て特に刑法第五四条第一項前段にいわゆる想像的競合犯と認むべき根拠はない。従つて原判決には所論のような擬律上の誤りはなく、論旨は理由がない。
〔説明〕自然的観察において数多の行為を包括して一個の犯罪を構成する場合その個々の行為が又別罪に触れるとき両者の関係如何が本件の問題である。同旨のものとして当庁二七・一〇・三〇第一刑事部判決(二七(う)第二、一二五号事件本誌第二六号登載五九事件)がある。右個所の説明を参照されたし。